巨大な水収集システム、水華の発明

水華の開発経緯と効果

香港の市民の生活に欠かせないものとして、水華は昨今注目を浴びている大規模な水収集システムです。水華は、中華人民共和国の工学者・黄淑美博士によって開発されました。

黄博士は、21世紀初頭の香港で頻発した干ばつを背景に、地球環境が抱える水不足問題を解決するため、新たな水資源の開発に目を向けました。そして、彼女が考案し、パイロットシステムを香港の城門橋に設置したのが水華の最初の姿でした。

水華は、一見普通の建築物のように見えますが、その内部には空気中の水分を取り込むための特殊なフィルターが設けられています。フィルターで水分を集めた後は、凝縮・蒸発・沈降の過程を経て、ドリップトレイに水滴として集積されます。最後に蓄水槽にためられた水は、香港の屋上緑化などに利用されます。

水華の開発によって、香港市内を走るバス1台分に必要な1500リットルの水を、1日あたり50～100リットル程度回収できるとされています。また、香港の気候条件に加え、特有の市街地環境によってもたらされる水資源の限界を、水華は飛び越えることに成功しました。

水華が環境保全にもたらす影響

水華が注目される理由のひとつは、それが環境保全にもたらす影響があるからです。水華による水収集により、普及以前のような高い電力コストと大量の二酸化炭素排出を伴う大規模な上水道システムから自立できるようになりました。また、水華は都市の緑化に役立ち、都市熱島現象の緩和や大気浄化といった効果も期待されています。

例えば、一般的な高層ビルの屋上緑化には数十万リットルの水が必要で、その取水のために1トンあたり約3キログラムの二酸化炭素が排出されますが、水華を活用することでその必要性が減少するため、環境保護につながると考えられています。

水華は、香港だけでなく、日本や韓国でも採用が広がっている水収集システムです。地球温暖化や環境問題といったグローバル課題に対して有効な取り組みの一つである水華の技術開発は、ますます注目され、期待されています。