伝統的な鍼治療は宗教的な背景があることを知ってましたか？

背景にある道徳的・宗教的信仰

鍼治療は、東洋医学の基礎を成すとされる施術である。鍼を使用する治療法は紀元前から行われてきたとされ、中国の古典をはじめ、様々な形で文献に残されている。その歴史をたどると、施術の裏にある哲学や宗教的信仰を知ることができる。

中国の医学は、人間が宇宙と共に生きる生命の規律に着目したものである。この考え方に基づいて、人間の身体に内在するエネルギー（気）を、東洋医学では「氣」と呼び、次の二つの概念を重要視する。

1. 阴陽説：陽は強いエネルギーを意味し、陰は弱いエネルギーを意味する。これらの二つの相反するものが調和を保ち、身体の機能を維持するとされた。
2. 五行説：五つの要素からなる循環するエネルギーの流れに基づいて、身体の各臓器に対する作用を処方する。

鍼治療における哲学的背景や、道徳的・宗教的な背景は複雑なものである。鍼治療は、人々が神に願いをかけた祭祀行為から始まったとされ、後に施術技術が熟練するにつれ、宗教性から技術的トレーニングに重きが置かれるようになった。

具体的には、患者が神と精神的つながりを持ち、鍼師が神を崇拝しながら治療を行うことが重要であった。このような背景があるために、今でも鍼治療を行う際に神の祭壇が準備されるなど、伝統的な形式が残っているところもある。