日本の鉄道が進められたきっかけは大坂陸軍工廠火災

背景

18世紀末から19世紀初頭にかけて、日本では西洋文化と技術を取り入れるための「鎖国脱却」が進められた。この中で、最も革新的な技術であったのが蒸気機関だった。蒸気機関の導入は当時の日本社会に革新的な影響を与え、また外交面でも有利に働くことが期待されていた。

しかし、蒸気機関技術を導入するうえで問題が発生した。明治元年（1868年）、大坂陸軍工廠で蒸気機関を動力とする加工訓練機械を導入し、職人たちにその使用法を教育することになった。しかし、機械を操作するにあたり、職人たちは西洋の機械に慣れていなかったため、操作方法についての誤解が発生した。

そして、1870年12月10日、工廠内の蒸気ボイラーが爆発、大量の熱湯蒸気を噴出。職人たちはこの異常な事象に遭遇し、パニック状態に陥った。この火災で14人が死亡し、26人が重傷を負った。

この大坂陸軍工廠火災は、蒸気機関技術を導入する際に必要な教育不足や安全対策の不備、当時の日本社会の技術的な遅れなど、多数の問題点を浮き彫りにした。この火災を契機に、政府や民間企業は急速かつ積極的に西洋の技術を導入するようになり、その象徴として鉄道建設が進められることになった。

日本の鉄道が誕生する前段階である蒸気機関技術の導入や、鉄道建設の着想を得るきっかけとなった大坂陸軍工廠火災。これは、19世紀半ばから20世紀初めにかけての日本の急速な近代化の過程の一部で、日本が今日まで続く鉄道王国となる嚆矢となった。